プライバシー保護された広告測定が過ちを犯すとき
プライバシーを保護する広告測定は、サードパーティの広告業社の都合に合わせるのではなく、ユーザーによる制御/コントロールと透明性を優先すべきです。
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この投稿はプライバシー・エンジニア・リードのShivan Kaul Sahibによって書かれた記事の日本語訳です。
Braveは、強力なサードパーティ広告やトラッカーのブロックなど、クラス最高のプライバシー保護を提供します。しかしプライバシーに対する要求が高まるにつれて、Webブラウザや拡張機能を比較するWebサイトが増えてきました。 これらの比較ツールの中には https://privacytests.org や https://coveryourtracks.eff.org のように、プライバシーを重視するユーザーにとって貴重なリソースとなるものもありますが、中には重大な欠点があるものも存在します。この投稿では、いくつかの(アドブロックの有効性を評価すると主張する)アドブロックのテストサイトが、いかに正しく無いテストによる不十分な検証であるか、さらには誤解を招くような結果によって広告やトラッカーブロックのエコシステムにいかに悪影響を及ぼしているか、検証を行います。
アドブロッカーのテストサイトは、多くの理由で誤解を招くことがあり、時として有害になることもあります。以下に4つの主要な問題点を紹介します。
第一に、これらのテストサイトは多くの場合低クオリティです。良かれと思ってのことと考えられますが、多くのアドブロック・テストサイトは、存在しない、あるいは広告やトラッキングにさえ使われていないドメインがブロックされるかどうかチェックします。さらに、理由がわからない、または十分な説明がされていないテストが行われていることがあります。
例えば、.box.banner_ads.adsbox
のような特定のクラス名を持つHTML要素をアドブロッカーがブロックするかどうかをチェックするテストサイトを考えてみましょう。ほとんどのテストサイトでは、なぜアドブロッカーがこの要素をブロックしなければならないのか、その根拠は示されません。アドブロッカーはより効果的なセレクタを特定し、実際の広告配信要素をブロックするケースがあります。テストの基準について明確な説明がなければ、その妥当性を評価することはできません。実質このテストは、ブロック対象とすべきかどうか合理的な理由がない状態で、要素がブロックされるかどうかを恣意的にチェックしていることになります。
精通したユーザーであれば、Braveのようなアドブロッカーにカスタムフィルター(##.box.banner_ads.adsbox
など)を追加して、これらのテストを人為的にパスすることが簡単にできます。しかし、そのようなことをしても具体的なメリットはなく、不必要なルールを作り出し、不注意にWebサイトを壊してしまうかもしれません。テストが不注意に、誤って行われると、プライバシーツール、ひいてはユーザーにとって、良いことよりも悪いことが増えることになります。
テストサイトは、実際の広告配信やトラッキングのやり方を再現していないことが多いです。例えば、あるフィルターリストのメンテナンスをされている方が指摘されましたが、URLのフルパスを指定せずにベース・ドメインにネットワークリクエストを発行し、要素ブロックを検証するケースがあります。このテストは、トラッカーや広告サーバーの実際の運用方法を反映していません。アドブロックのメンテナンスでは、Webサイトの機能を壊さないように、必要最小限のブロックを作成するため慎重にルールを作成します。
リソース置換のような高度なアドブロック機能は、これらのテストではよく見落とされます。リソース置換とは、アドブロックが既知のトラッキングスクリプトを無害なバージョンのスクリプトに置き換えるような手法です。これにより、プライバシーに有害なスクリプトをブロックしながら、Webサイトの動作を維持することができます。これらの機能は単純なネットワーク・リクエスト・テストでは簡単に測定できないため、テストサイトの採点メカニズムから除外され、アドブロッカーの真の効果を過小評価することにつながります。
Webサイトが壊れるリスクを減らすために、アドブロッカーはすべてのWebサイトに適用される汎用ルールではなく、ドメイン固有のルール(特定のWebサイトにのみ適用されるルール)を使用することが多いです。例えば、Webサイト search.com
の usertrack.js
へのリクエストは、クロスサイトトラッキングに使用されていることが判明しているため、ブロック対象とするべきかもしれません。しかし shoes.com
のような別のWebサイトでは、usertrack.js
という名前のスクリプトは、ナイトモードやテーマのようなユーザーの好みを追跡するために使われる正当なスクリプトとして使用されているかもしれません。テストサイトは、その評価が独自のドメインに限定されているため、このようなニュアンスをテストすることができないのです。そのため、スクリプト名の単純な重複が採点ミスにつながることがあります。
根本的に、これらのテストはアドブロッカーを効果的に区別することができません。ほとんどのアドブロッカーは、若干の違いはあるにせよ、そのブロックルールのために同じコミュニティが管理するフィルターリストを使用します。例えばBraveは、評価の高いEasyListプロジェクトを直接サポート、メンテナンスしており、広告とトラッカーのブロックに関連する研究と技術を公表しています。このように基盤が開かれていることで、フィルターリストの管理者は協力し合い、特に資金力のある広告会社やトラッキング会社に対して迅速に適応することができるのです。
つまり「あなたのアドブロッカーはtracker.comへのリクエストをブロックしていますか?」と単純な測定をするテストサイトは、基礎となるルールが主要なアドブロッカー間でほとんど同じであるため、テストとしてあまり価値がありません。また、このようなテストは、アドブロッカーがユーザーの誤解を避けようとしてテスト結果を操作することを助長します。主要なアドブロッカーであるuBlock OriginとAdGuardは、ユーザーを混乱させたり、警告したりすることを避けるために、テストをパスするための回避策(uBO workaround, AdGuard workaround)を追加しました。
Braveは、過去に多くのテストサイトの制作者に積極的に働きかけ、テストを改善するための支援を試みてきました(ここにいくつかの例を挙げます)が、テスト手法の根本的な問題(この投稿に記載されています)や、低品質のテストが追加され続けているという事実のために、そのような取り組みの優先度を下げざるを得ませんでした。
アドブロッカーは、拡張機能ベースかネイティブ・サポートか、パフォーマンス、高度なアドブロック機能、倫理的慣行などの分野で差別化を図るべきでしょう(そのように比較いただけるケースもあります)。アドブロック比較サイト、そしてユーザーが注目すべきなのは、こうした差別化されるべき要素です。
GoogleのManifest V2の非推奨化により、アドブロックWeb拡張機能はその機能に対する存続の脅威に直面しています。少なくとも、Manifest V3は、ブロックルールに上限を課し、サービスワーカーを必要としながらバックグラウンドページを禁止することで、アドブロック拡張機能を著しく阻害します。BraveのRustベースのアドブロック・エンジンは、ブラウザに直接統合されており、拡張機能に依存しないためGoogleが拡張機能に要求するかもしれない、いかなるものにも影響を受けません。そのためBrave Shieldsは、広告とトラッカーに対する優れたブロック体験を提供し続けることができます。 Braveはまた、メインのアドブロッカーとしてBrave Shieldsに完全に切り替える前に、暫定的にこれまで使用されてきたManifest V2拡張機能をサポートする予定です。
効率的なマッチングアルゴリズムは、広告やトラッカーをブロックしながら、ブラウジング速度やシステムリソースへの影響を最小限に抑えます。BraveのRustベースのアドブロック・エンジンはブラウザに組み込まれているため、ブラウザとアドブロック・コードの両方に深い変更を加えることができ、最高のブロック結果と最大限の柔軟性を保証します。私たちは、エンジンのパフォーマンス、特にメモリ使用量の改善に積極的に取り組んでいます。
Braveは、プロシージャル・コスメティック・フィルタリングのような新しいアドブロック機能を常に追加しており、広告やトラッカーのブロックをきめ細かく制御し、ユーザーのためにブロックできる広告の種類を拡大しています。
有料プログラムを提供する拡張機能とは異なり、Braveは特定の広告主やトラッカーのブロックを解除するための支払いを受け付けません。ユーザーのプライバシーとエクスペリエンスが最優先されます。
こうしたアドブロッカー・テスト・サイトの背後にある意図には驚愕させられます。オンライン・サードパーティ・ベースの広告とトラッキングのエコシステムは、米国の諜報機関でさえも、悪質な広告の脅威に対抗するためにアドブロッカーを社内で使用するほどにまで急成長しています。Braveはサードパーティ広告を率直に非難し、アドテクノロジーのサードパーティではなくユーザーを優先するBrave Adsのような代替案を提案してきました。しかし、善意とはいえ広告ブロックのテストサイトは現在、悪影響の方が大きいのです。 恣意的で低品質な指標を宣伝し、ユーザーを惑わせ、アドブロッカーに不必要な回避策を取らせ、この分野の有意義な進歩を阻害します。
加えて、広告ブロックは重要なツールですが、Braveのようなプライバシーに特化したブラウザはスタンドアロンの広告ブロックではできない方法でユーザーに保護機能を提供します。ユーザーのWeb体験を保護し、向上させるためにBraveがどのようにプライバシー機能を搭載しているかについて詳細は、プライバシー・アップデート をご覧ください。Braveは、https://privacytests.org や https://coveryourtracks.eff.org のような合理的なテストサイトや、より大きなオープンソースのフィルターリストやアドブロックのコミュニティと協力していきます。一貫したテスト方法と、共通のプライバシー被害に関する合意されたセットを通じてのみ、すべてのユーザーのためのWebプライバシーを改善することができるのです。
プライバシーを保護する広告測定は、サードパーティの広告業社の都合に合わせるのではなく、ユーザーによる制御/コントロールと透明性を優先すべきです。
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